那須「森林ノ牧場」見学記|森で育つジャージー牛と、シェフが感じた自然の循環

美食工房ラトリエ・ムッシューのオーナーシェフ宮﨑力が、那須町の「森林ノ牧場」を見学しました。森林ノ牧場は、木材価格の低迷や森林従事者の高齢化等が原因で、放置されてしまった森林にジャージー牛を放牧することで森林を管理する「森林酪農」という手法を取り入れた新しいビジネスモデルを実践されています。

本記事では、森林ノ牧場の取り組みと、見学を通して宮﨑が感じたことをご紹介します。

この記事でわかること

  • 森林ノ牧場とはどんな牧場か
  • 森と牛がつくる自然の循環と、ジャージー牛の牛乳
  • 見学したシェフが感じたことと、森林ノ牧場の訪ね方

森林ノ牧場とは

森の木陰で休むジャージー牛(森林ノ牧場)

森林ノ牧場は、栃木県那須町にあるジャージー牛の牧場です。牛たちは森の中で放牧され、森に生える草を食べながら、木陰で休んだり歩き回ったりして過ごしています。

使われていなかった森林を牧場に

日本では植林された森林が資源として使われないまま荒れ、土砂崩れや獣害につながる問題が各地で起きています。2009年に、森林ノ牧場は那須の使われていなかった森林(放置林)を活かして拓かれました。森林と酪農を掛け合わせることで、新たな循環のしくみをつくれるのではないか、という考えが始まりです。

代表の山川将弘さんは、学生時代に北海道の牧場で搾乳を体験したことが原点だといいます。

森林ノ牧場の乳製品の美味しさ

「放牧」「ジャージー牛」「低温殺菌」の3つのこだわりから、森林ノ牧場の乳製品の美味しさが生まれています。

①放牧

森林ノ牧場の牛は放牧で飼育されているので、牛が食べる草の成分が変わることで、牛乳も同じように変化します。春は草の栄養素が高いことから、牛乳が黄色くなり香りが良くなります。夏は牛が水分を多くとるので、さらっとした牛乳に。秋は草の繊維分が高くなるので、牛乳が濃厚になってきます。冬は乾草等の保存飼料を食べるので、牛乳が白くなり、脂肪やたんぱく質が高くなります。

②ジャージー牛

ジャージーはイギリスの「ジャージー島」が原産の牛で、日本には明治初期に導入されました。日本の乳牛の0.6%しか飼育されていない希少な牛で、そのミルクは乳成分が高く、コクや香りが良いのが特徴です。

また、体が比較的小さいので、森の中での放牧に向いています。

③低温殺菌・ノンホモジナイズ

森林ノ牛乳は63℃という低い温度で30分間じっくり殺菌することで、熱による変性を小さくし、より搾りたての生乳に近い風味にしています。この低温殺菌はジャージー牛乳の香りや濃厚感、ミルクの季節感を引き出せる方法です。

また、製造工程で牛乳に含まれる脂肪球の粒を細かく均質化するホモジナイズ処理を行わないので、牛乳を置いておくとクリーム(脂肪分)が上に自然に浮かんできます。搾りたての自然な味わいが特徴です。

牛がつくる森の循環

森の下草を食べるジャージー牛(森林ノ牧場)

人が利用できない森の草を牛が食べ、牛のふんには虫が集まり、その虫を求めて小動物もやってきます。そうして森の土が豊かになると栄養のある草が育ち、その草を食べた牛から良質なミルクが採れるようになります。牛が森に入ることで、こうした循環が自然に生まれています。

2021年には、里山の風景が広がる益子町に第二牧場を拓きました。耕作放棄地に牛を放ち、里山ならではの生き物の多様性にあふれた牧場づくりを進めています。森林ノ牧場は、こうした取り組みを「生物多様性酪農」と呼んでいます。

シェフが見学で感じたこと

ここからは、見学したオーナーシェフ宮﨑力の言葉でお届けします。

森と牛と人が関わり合う牧場

森を背に草を食むジャージー牛の群れ(森林ノ牧場)

那須の「森林ノ牧場」を見学させていただきました。

使われていなかった森林を牧場として活かし、自然と牛と人が関わり合いながら、新たな循環を育む。その取り組みには、食材を扱う料理人として、深く心を動かされました。

牛が森の草を食べ、そのふんに虫が集まり、土が豊かになっていく。そして、そこに育つ草が、また牛を育てる。一杯のミルクの背景に、こうした自然の営みがあることを、改めて感じる機会となりました。

代表・山川さんにいただいた、ジャージー牛のホットミルク

こちらに顔を寄せるジャージー牛(森林ノ牧場)

見学の際、代表の山川さんに、ジャージー牛のホットミルクをご馳走になりました。

温かな一杯を味わいながら、ミルクそのものが、これほど心に残るご馳走になるのかと感動しました。

牧場の考えに触れてからいただく一杯には、おいしさとともに、その土地の豊かさや、日々牛と向き合う方々の思いまで感じられるようでした。

食材が生まれる場所を訪ねる理由

干し草を食べるジャージー牛の子牛(森林ノ牧場)

食材が生まれる場所を訪ね、つくり手の言葉を聞き、自分の舌で味わう。そこで感じたことを大切に、ラトリエ・ムッシューの料理にもつなげていきたいと思います。

食材とつくり手を大切にする、ラトリエ・ムッシューの料理

美食工房ラトリエ・ムッシューは、那須高原の森に佇む完全予約制のフレンチレストランです。地元・栃木の旬の食材を取り入れた料理を御客様に召し上がっていただくことで、栃木県・那須でつくられた食材の魅力を伝えていきたいと思います。

  • とちぎ和牛「匠」
  • 幻のポーク「梅山豚」
  • 那珂川の鮎
  • 狩猟期のイノシシなどのジビエ
  • オリジナル卵「優」
  • 那須高原の野菜

今回の牧場見学のように、生産者を訪ねて食材の背景を知ることも、料理を仕立てるうえで大切にしていることのひとつです。

森林ノ牧場を訪ねるなら

放牧地で草を食べるジャージー牛(森林ノ牧場)

森林ノ牧場では、営業時間中であれば、カフェの横から森に入り、牛たちの放牧地まで散策できます。入場は無料です。カフェでは、ジャージー牛乳のソフトクリームや乳製品、地元の農家さんの野菜を使ったランチなどを楽しめます。

所在地 栃木県那須郡那須町大字豊原乙627-114
営業時間 10:00〜16:00
定休日 木曜日(祝日・GW・お盆は営業、冬季休業あり)
電話番号 0287-77-1340
公式サイト 森林ノ牧場

カーナビでは「ゆたか苑」を目的地にして、その先へ進むと案内されています。営業時間や休業日は変わることがあるため、お出かけ前に公式サイトでご確認ください。

まとめ

草花の間からこちらを見つめるジャージー牛(森林ノ牧場)

森林ノ牧場は、使われていなかった森林を活かし、ジャージー牛と自然がつくる循環の中で酪農を営む牧場です。見学を通して、宮﨑は一杯のミルクの背景にある自然の営みと、つくり手の思いに触れました。

食材が生まれる場所で感じたことを、これからもラトリエ・ムッシューの料理につなげてまいります。那須高原の森に佇む一軒で、地元の旬の食材を使ったおまかせコースをお愉しみください。

※記事内の放牧風景の写真の一部は、森林ノ牧場よりご提供いただきました。

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