ティーペアリングとは、コース料理の流れに合わせて一皿ごとに最適なお茶を選び、ワイングラスで提供するスタイルです。ワインペアリングの「お茶版」とお考えいただくと分かりやすいでしょう。近年はフランスをはじめ世界のガストロノミーで注目され、日本でも高級レストランを中心に広がりつつあります。
ポイントは、単なる「食事中のお茶」ではないことです。お茶の職人が茶葉の旨みや個性を最大限に抽出して、ワインのようにボトルに詰めた「ボトリングティー」は、香りの立ち上がり・味わい・余韻が秀逸で、お茶の美味しさを体験することができます。
そこで、お酒を召し上がらない方にも、ワインと同じような「料理と飲み物のマリアージュ」を心から楽しんでいただきたい。との想いから、美食工房ラトリエ・ムッシューでは、ボトリングティーによるティーペアリングを始めました。
本記事では、ティーペアリングの基礎知識から、当店が厳選した日本を代表するボトリングティーの造り手、実際のコースでのペアリングの具体例までご紹介します。
この記事でわかること
- ティーペアリングとは何か
- フランス料理と日本茶の相性が良い理由と、ボトリングティー3ブランドのこだわり
- ラトリエ・ムッシューで実際に体験できるティーペアリング
ティーペアリングが選ばれる理由
- お茶の美味しさの再認識
- 世界的に広がる脱アルコールによる健康志向の高まり
- 昨今の抹茶をはじめとした日本茶等への世界的な関心の高まり
- お酒が飲めない又は控えたい方も楽しめる
- 運転される方も安心してマリアージュを体験できる
- 製造ブランドの増加や製造技術等の高度化による多種多様な製品の登場
- カフェインや温度帯の設計により、食後まで心地よい流れを作れる
近年は妊娠中・授乳中の方、健康志向でアルコールを控える方が増え、「ノンアルコールでも妥協しない一杯」への需要が世界的に高まっています。ティーペアリングはその答えのひとつです。
フレンチ×日本茶のティーペアリングを始めた背景
フランスと日本茶の150年の歴史
日本茶とフランスの関わりは、実は150年以上前にさかのぼります。幕末から明治にかけて、日本茶は生糸と並ぶ日本の主要輸出品であり、パリ万国博覧会などを通じてヨーロッパに紹介されてきました。
現代になると、パリでは日本茶専門店やサロン・ド・テが次々と誕生し、ミシュラン星付きレストランがティーペアリングをコースに組み込む例も珍しくなくなりました。ワインの本場フランスで、日本茶が「テロワールを味わう飲み物」としてワインと同じ土俵で評価され始めています。
フランス料理と日本茶の相性が良い理由
| フランス料理 | 日本茶 |
|---|---|
| フォン・ジュに代表される「うまみ」 | テアニン・アミノ酸由来の「うまみ」 |
| ソースの酸味・タンニン | カテキン由来の渋み・収斂性 |
| 土地とつくり手を映すテロワール | 産地・品種・茶師の個性 |
玉露や被覆茶の深いうまみはソースのコクと共鳴し、煎茶や烏龍茶の心地よい渋みはバターや脂をすっと切ってくれます。ワインで語られる「テロワール」の概念が、お茶にも当てはまる要素があることから、フレンチとの相性が良いのです。
ボトリングティー製造技術の進化
ティーペアリングを支えているのが、近年大きく進化した「ボトリングティー」の製造技術です。
ボトリングティーとは、茶師が適切な温度と時間で茶葉のポテンシャルを最大限に引き出して抽出し、ワインボトルなどに詰めた高級リキッドティーのこと。低温でじっくり抽出するコールドブリュー製法、非加熱での除菌・充填技術、香りを保つ密栓技術などの進化により、「淹れたての最高の一杯」をレストランで安定して再現できるようになりました。
その品質が非常に高いことから、航空機のファーストクラスや高級レストラン・料亭で採用されています。
美食工房ラトリエ・ムッシューが採用するボトリングティー・ブランド
カネス製茶
「本物の日本茶の価値を、世界へ長く広くつないでいく」

カネス製茶は、全国有数の茶処・静岡県島田市で創業65年以上の歴史を持つ老舗製茶会社です。農林水産大臣賞の受賞歴を持つ茶師である3代目・小松幸哉氏が茶葉を監修し、4代目・小松元気氏が2022年11月にボトリングティーブランド「IBUKI bottled tea」を立ち上げました。
独自の「フィルタード・コールドブリュー製法」等により低温で時間をかけて抽出された日本茶は、透き通った水色と立ち上る香り、濃厚なうまみが特長。「IBUKI」「KOUSHUN」「NIROKU」の3種を軸に展開され、「本物の日本茶の価値を、世界へ長く広くつないでいく」というミッションのもと、帝国ホテルとのコラボレーションボトルを手がけるなど、日本茶の新しい価値を切り拓いています。
akari bottled tea
「飲める人も、飲めない人も、すべての人が等しく”香りと余韻で料理を楽しむ”喜びを感じられるように——。」

akari bottled teaは、「ガストロノミーでのノンアルコール体験を向上させたい。」を掲げ、単一農園で丹精込めて育てられた無農薬の国産茶葉を水だけで丁寧に仕上げるボトリングティーブランドです。
創業者自身が、妊娠・授乳期の「飲めない日々」の中で、心から満足できるノンアルコールの一杯を探し求めた経験から誕生しました。ほうじ茶やルビー烏龍茶のスパークリングティーは、繊細な泡とともに香りが広がり、乾杯のシーンにもふさわしい華やかさ。まだ広く知られていない茶葉のつくり手に”灯”をあてたいという想いが、ブランド名に込められています。
ROYAL BLUE TEA
「和合良茶」

ロイヤルブルーティーは、2007年、神奈川・湘南で誕生した最高級ボトルドティーのパイオニアです。手摘みの茶葉のみを使い、3〜7日間かけて無添加・加熱殺菌しない独自の抽出製法で製造。ワインボトルに詰められたその佇まいは、まさに「ワインのように楽しむお茶」です。
台湾の高級茶・東方美人を使った代表作「Queen of Blue」をはじめ、そのラインナップは航空会社のファーストクラスや高級レストランでも採用されています。
美食工房ラトリエ・ムッシューが提案する料理×お茶のペアリング
当店のシェフが実際にお料理と合わせて選んだ、ペアリングの具体例をご紹介します。
1皿目:岩牡蠣とサワークリーム 青海苔の潮ジュレ × カネス製茶「KOUSHUN」

岩牡蠣を低温でふっくらと加熱し、まろやかな酸味のサワークリームを添えました。青海苔と貝の出汁から仕立てた潮ジュレを合わせ、岩牡蠣の濃厚な旨味と磯の香りを引き立てています。
【KOUSHUNを合わせた理由】
花や果実を思わせる華やかな香りの後に、上質な海苔のような香りと爽やかな旨味、ほどよい苦みが広がるKOUSHUN。その青々しい香りが青海苔と潮のニュアンスに寄り添い、お茶のほのかな苦みが岩牡蠣の濃厚さとサワークリームのコクをすっきりと整えます。料理とお茶に共通する「海の香りと旨味」をつなげたペアリングです。
2皿目:山椒風味の豚バラ肉のブレゼ × カネス製茶「NIROKU」

豚バラ肉を香ばしく焼き上げ、蜂蜜、赤ワイン、香味野菜、オレンジ、りんご、生姜、トマトピューレ、フォンドヴォーとともに柔らかく煮込みました。果実の甘酸っぱさと赤ワインの深み、生姜と実山椒の清涼感を重ねた、フランス料理の技法で仕立てる豚バラ肉の角煮です。
【NIROKUを合わせた理由】
NIROKUの熟した果実や蜂蜜を思わせる華やかな香りが、料理に使った蜂蜜やオレンジ、りんごの甘酸っぱい風味と自然に重なります。和紅茶の柔らかな旨味は、豚バラ肉とフォンドヴォーの深いコクに寄り添います。渋みが穏やかなのでソースの繊細な甘味を損なわず、後口に残る紅茶の清涼感が豚バラ肉の脂を優しく整え、ほのかなスパイス感が生姜と実山椒の爽やかな余韻を引き立てるペアリングです。
3皿目:梅山豚ロース肉と椎茸のファルシ × akari bottled tea「龍焙」

中国原産、猪八戒のモデルとなったと伝わる幻のポーク・梅山豚(メイシャントン)を使用した一皿。低温でしっとりローストしたロース肉に、肩肉の挽肉を椎茸に詰めて網脂で包み焼き上げたファルシを添えました。ソースは中国料理を連想させる紹興酒とシェリー酒をベースに、フォンドヴォーと干し貝柱、オイスターソースの旨味を重ね、クリームとバターでまろやかに仕上げ、熟成酒の芳香な香りをまとめています。
【龍焙を合わせた理由】
焙煎やローストナッツのような香りが、梅山豚の焼き目と椎茸の香ばしさに重なります。クローヴやシナモンを思わせる甘いスパイスのニュアンスは、紹興酒とシェリー酒の熟成香を引き立てます。烏龍茶のコクが干し貝柱とオイスターソースの濃厚な旨味を受け止めながら、穏やかな渋みと清涼感が豚肉の脂とクリームの余韻をすっきりと整える、料理の焙煎香と熟成香、旨味をまとめたペアリングです。
ティーペアリングのよくあるご質問
お酒が飲めなくてもペアリングを楽しめますか?
はい、ティーペアリングはノンアルコールですので、お酒を召し上がらない方やお車でお越しの方にも、お料理との組み合わせを最後までお楽しみいただけます。
お茶だけの注文はできますか?
ティーペアリングは、お料理に合わせてお茶をお愉しみいただくスタイルです。コースのお料理とあわせてご堪能ください。
カフェインが気になるのですが大丈夫ですか?
当店で使用するボトリングティーは、いずれも水出し・低温抽出を中心とした製法のため、高温で淹れるお茶に比べてカフェインの抽出が抑えられています。ただ、ノンカフェインではありませんので、妊娠中の方など気になる場合は、ご予約時にお気軽にご相談ください。
まとめ
ティーペアリングは、お酒を飲む・飲まないにかかわらず、すべてのお客様に「料理と飲み物のマリアージュ」をお届けできる新しいスタイルです。フランス料理と日本茶、それぞれの土地とつくり手の物語が一皿の上で重なる時間を、美食工房ラトリエ・ムッシューで是非ご体験ください。